2018年11月20日火曜日

♪カルロス・ゴーン氏の件

こんにちは、京都の公認会計士・税理士の川元麻衣です。


昨日夕方に「カルロス・ゴーン氏の速報」が出て、驚きました。
そして、夜10時から約1時間半にわたって、
日産の西川(さいかわ)代表取締役社長が記者会見を開催しました。

ゴーン氏の3つの罪として、西川社長が発表したことは以下のとおりです。

①有価証券報告書上に役員報酬を過少に虚偽表示をした
②私的な目的で投資金を使った
③私的な目的で経費を使った


②③については詳細が不明ですが、
①については徐々に明らかになってきています。


まず、ゴーン氏の報酬は、『有価証券報告書』の中の、
「第一部 企業情報」→「第4 提出会社の状況」
→「6 コーポレートガバナンスの状況 役員の報酬」に記載されています。
2010年度~2017年度までのゴーン氏の年間の役員報酬をまとめました。


   年度  ゴーン氏報酬
       年     百万円
2010 982
2011 987
2012 988
2013 995
2014 1,035
2015 1,071
2016 1,098
2017 735

報道では、上表の2010年度~2014年度の5年間の
黄色部分合計49億8700万円が、
実際は99億9800万円で、
50億1100万円が過少に計上されていたとされています。

各年度ごとの実際の過少金額は明らかにされていませんが、
単純に50億1100万円を5年で割ると、
1年間で10億220万円過少に計上していた計算になります。


この過少金額、普通に考えれば多いと考えられる方の方が多いと思います。


ただ、監査法人の会計監査、監査法人(公認会計士)の責任という側面で考えると、
「重要性の基準値」というものがあり、
この過少金額を監査法人がどう見ていたか、によると思います。

「重要性の基準値」とは、簡単に言うと、
会社の規模や売上高や利益の数字の大小により、
ある一定の金額を超えた虚偽が見つかれば会社に修正してもらう必要がありますが、
超えなければ、影響は僅少としてパスできる という考え方です。


つまり、会計監査とは、決算書が1円単位まで正確かどうかを確かめる仕事ではなく、
「重要な」虚偽表示がないか を確かめる仕事なのです。


なので、重要性の基準値をどの金額やパーセンテージで設定していたか等の
監査法人の方針(専門的に言うと「監査計画」)があるため、
会計監査がどうだったのか?
ということについては、今の段階で簡単には言うことができない というのが結論です。


ケースとしては、監査法人がからくりに気づいていない場合も考えられますが、
たとえば不正が巧妙に仕組まれていた場合、
実際問題、クライアントの巧妙な偽装工作をあばくほどの十分な監査手続を、
限られた時間内で行うことができるのか、、、

私は同じ公認会計士の立場として、
そんな簡単に意見は申し上げることはできません。


今回は、
ゴーン氏に権力が集中したガバナンスが問題だったと、
西川社長から記者会見で報告されましたが、
確かにそれはあると思いますし、
そのようなガバナンスによる弊害を、
公認会計士の立場から注意・注視することはできなかったのか、
いろいろと考えを巡らすことはできます。

ですが、それぞれの立場ではそれぞれあるので、
まだ詳細が明らかになっておらずに、正確に理解できないこの状況で、
簡単に意見を言うことはできません。

また詳細が明らかになれば続報をお伝えしたいと思います。


私としては今回の事件や、過去の粉飾事件を胸に刻み、
公認会計士としての自分の役割をしっかり果たしていくだけだと考えています。



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